走れ小心者 ARMADA はてなブログ版

克森淳のブログ。特にテーマもなくゆるゆると。

過剰な競争に馴染みすぎた者

 小林よしのりを「ジャンプシステムの犠牲者」と見る向きもあるが、オレは逆にそれに馴染みすぎたため、ああなった気がして。「わしは、弱者のためにも絶対強者になりたい!」とか、さらにのちの「与党精神を持て!」とか。その辺をカマヤン(id:kamayan)さんと話したところ「小林の個人史で言えば、オウム真理教に命を狙われた時、出版社が守ってくれなかったのも大きいのでは」との事だったが、その時オレは「わしは、弱者のためにも絶対強者になりたい!」は言ってなかったな……。その言葉が出るゴー宣のエピソードは、小林の少年キング連載時代を描いたものだったが、当時を知る少年画報社の編集者には、言い分があったようだけど。遅くなったが、思想面での小林の変節については、この記事では深く突っ込まない。「わしは、弱者のためにも絶対強者になりたい!」に話を戻すが、マンガ界にマスで引っ張って行く者がいなければダメなんじゃないかと言う意味とも取れるけど、それでもジャンプシステムのような「過剰な競争」に馴染みすぎてそう思うようになっちゃったような。それに、こち亀107巻の甲斐よしひろによる解説だと、小林が東京に出て来て、甲斐やこち亀作者の秋本治くらもちふさこらと飲んだりしてた時「小林が自己嫌悪からくらもちさんに毒づいて、とうとう泣かせてしまった」りしたと言うが……。自己嫌悪に負けて失速せず、うっかり過剰な競争に馴染んじゃったのが、小林にとっての不幸だと思う。カマヤンさんは小林にいささか同情的だった*1けど、オレとしては小林の事を考えるとなんか引っかかって。

 オレが小林を「ジャンプシステムの犠牲者」と見ないのは、なんのかんのと生き残ったからなんだよね。犠牲者は短命に終わった作家だけじゃなく、それ以前にデビュー倒れした者なんじゃないかと思えて。オレも少なくとも今のところ商業ベースでマンガを描くに至らなかったから、そう思うのかも知れんけど。と言うか、あまりに大きな話みたいなんで、結論が見出せん。今はここまで。文中一部敬称略。

*1:60~70年代に、市民活動から保守論客に転向した清水幾太郎と言う人がいたそうだが、小林はそれに近いとも。