走れ小心者 ARMADA はてなブログ版

克森淳のブログ。特にテーマもなくゆるゆると。

ヒーローと教養

 『鶴+龍』で上岡龍太郎が、「むかしのヒーローは過去の英雄だったから見ているうちに教養が身に付いたが、今のヒーローは未来を描いているから教養が身に付かない」と言うような事を言った事が。それから20年近い時間が経って、今やFGOに出て来る歴史上の人物がモデルのキャラを経由して世界史を学ぶ若者が増えたとか。そう言う話を、『ラジプリズム』でも聞いた事がある。また、『刀剣乱舞』で日本刀に興味を持つ女性も増えた。上岡の言いたい事はそう言う事だったのか……と、終わらせると思うか? 確かに、歴史を学ぶ機会はあるに越した事はないが、用意してもそっぽ向かれる場合もあるではないか。いえね、『いだてん』が低視聴率だなんだと言われている件ですよ。大河ドラマで近現代ものはなかなか受け入れられないとは言え、メディアはいい加減な事言ってまあ。お前ら、近現代ものと言えば、戦艦大和が沈んだのゼロ戦が特攻した*1のしか見られないのかよ! マー、『いだてん』は単なるオリンピック万歳な話ではないし、時系列が振り子のように揺れ動くからとっつきにくいかも知れんけど、「オリンピックと日本人」と言う大きめのテーマに向かい合っているんだよなー。見ないのはもったいない。

 上岡の言った事に話を戻すが、実写で時代劇を撮りにくい環境にどんどんなっているのが、狭義の時代劇が廃れていった一因でもあろう。『いだてん』だって広義の時代劇なんだけど、近現代ものだから戦国時代だの江戸時代だのよりはなんとかしやすいような。時代が移り変わるうちには、「前向きにあきらめてもらう」場合もあるかと……。『鶴+龍』から20年経って、時代はますます変わっているし。それに上岡の「今のヒーローは未来を描いているから、教養が身に付かない」と言うのにも疑問が。上岡の想定しているのとは違う教養は、今のヒーローも与えているんじゃないか? みうらじゅんが、「ナウはいずれオールドになる」と言っていたのを考慮すると、上岡に「今のヒーロー」と言われたヒーローもまた過去の存在として、我々に語りかけてるかも知れんし。いや、上岡は「芸人の言う事を真に受けるな」とも言っているから、この文章がむなしい独り相撲の可能性だってあるけど。

*1:ゼロ戦でなくて零戦だとかいろいろ言われそうだが、それを見越した上でのイヤミである。