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克森淳のブログ。特にテーマもなくゆるゆると。

いきなり電子書籍マンガレビュー『メアリのカンバス』

 去る11月3日の「創作同人電子書籍」いっせい配信に参加した作品を、今回も紹介する。

・メアリのカンバス

 2011年に雑誌『Fellows!』に掲載された、山名沢湖氏の同名作品の同人誌化。時はビクトリア朝時代、ところは英国。主人公のメイド、メアリが主(あるじ)の老夫婦に絵心を見出されて本格的に絵を描くようになってから、その晩年までを40ページで描いたもので、絵や物語の優しい筆致が心地よい。既になかせよしみid:y_nakase)氏とクロ僕屋氏がレビューを書いておられたので、オレは彼らと違う視点で少し。なかせ・クロ僕屋両氏のレビューは下記に。

y-nakase.hatenablog.com
kurobokuya.blog.fc2.com

 物語の後半「本当の嘘」を描いた絵と「嘘の嘘」を描いた絵の違いについての言及がある。そこを読んでオレは、かつてマイコンBASICマガジンベーマガ)のファンタジーものについての読者欄にて起こった「幻想は嘘か」論争を思い出した。オレの兄はその論争を「くだらん」と言っていたが、のちにオレは英語で言う「fiction」や「fantasy」と「lie」の違いを知り「ベーマガの論争の頃、その違いを知っていればなあ……。兄にくだらんと言われても怯まずに済んだろうに」と思ったもので。話を戻すが『メアリのカンバス』で言及された「本当の嘘」は前述の「fantasy」で「嘘の嘘」は「lie」なんじゃないかと、読んで思ったのだ。と、作中で一番印象に残ったシーンについて、語らせてもらった。

 巻末には「あとがきまんが」と山名氏の畏友、村上リコ氏による解説がある。村上氏の解説で、メアリのモデルになった人物を知り、ちょっと考え込んだ。むかしは才がある者でも、身分の壁は分厚かったのねと。

 あと、蛇足だが、作中のタイムスパンがオレはなかなか把握出来んかった。それはオレが、長らくまとまったページのマンガを読むのが難しかったせいだろう。そうなったのには統合失調症による読書*1習慣の崩壊など、いろいろ理由が考えられるが、この記事や『メアリのカンバス』の読者には関係ないので割愛。

*1:マンガも、文章の本も問わず。